土銀ワンライ『汁粉』
第一志望の大学に合格して、地元より少し都会に飛び出した。
バイトはほとんど生活費に消えるし、自分で作る飯は不味くて自炊なんかすぐに諦めた。だけど学費は親が出しているし、仕送りのおかげで家賃は払えている。お年玉を貯金していたおかげで自動車免許も自力で取れたし、大学の仲間と、安い居酒屋で時々飲む金くらいはある。平均、いや、やや平均以上の恵まれた環境で俺は満足のいく大学生活を送っていた。
帰省するのは、大学に入ってから3度目だ。1年の夏と正月。2年の夏は、バイトのシフト上どうしても連休が取れなくて帰らなかった。さすがに成人式は帰らせてくれと、今月のシフトはだいぶ前からバイトリーダーに提出していたのだ。
