小説(ワンライなどツイッターにアップしたSS。タイトルをクリックしてください)

第一志望の大学に合格して、地元より少し都会に飛び出した。
バイトはほとんど生活費に消えるし、自分で作る飯は不味くて自炊なんかすぐに諦めた。だけど学費は親が出しているし、仕送りのおかげで家賃は払えている。お年玉を貯金していたおかげで自動車免許も自力で取れたし、大学の仲間と、安い居酒屋で時々飲む金くらいはある。平均、いや、やや平均以上の恵まれた環境で俺は満足のいく大学生活を送っていた。
帰省するのは、大学に入ってから3度目だ。1年の夏と正月。2年の夏は、バイトのシフト上どうしても連休が取れなくて帰らなかった。さすがに成人式は帰らせてくれと、今月のシフトはだいぶ前からバイトリーダーに提出していたのだ。

どしゃ降りというほどでもなく風も吹いていないけれど、濡れるのもつまらないので野暮用に傘をさして出ると、帰り道に軒下でタバコを吸いながら雨宿りする恋人に出くわした。

置いてきただなんて思っちゃいない。待っているとも、あまり思わない。考えていることが全てわかるほど多くを語ってはこなかった。けれど奴らがどんな面をしやがるか、そんなこともわからないほど他人でもなくなってた。

土銀SS 『 交点 』

2018年07月06日

彼が男子生徒でありながら俺に恋心を持ち、それを包み隠さず示してくる(ぶつけてくるといってもいい)という事を抜きにしても、そもそも入学した時から、あれの目を見るのは苦手だった。射竦められてしまうだなんて言うと大人として教師として情けない話だけれど、それはどうも怖いだとかいうことではなくて、なんというか、途方もない気持ちになるせいで。

土銀SS『 春 』

2018年07月06日

真っ白なバスタブに保護された色で、見落としてもおかしくはなかったが。水に溶けそうな薄紅色。桜の花びらが一枚、浮いていたのだ。ひょいと人差し指で救ってバスタブの縁に置く。先に入ったあの男が落としたのだろう。真っ裸で入る場所にこんなものを持ち込めるのは、あの癖毛しかない。

(c)2018 shimura.
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